町田そのこによる原作「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)は、2021年の本屋大賞を受賞し、すでに80万部を売り上げる圧巻の傑作ベストセラー小説。「52ヘルツのクジラ」とは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに、何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている――。
主演・杉咲花が演じるのは、自分の人生を家族に搾取されてきた女性・三島貴瑚(みしま・きこ)。ある傷を抱え、海辺の街に越してきた貴瑚は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれる、声を発することのできない少年と出会う。彼との出会いが呼び覚ますのは、貴瑚の声なきSOSを聴き、救い出してくれた、今はもう会えない安吾との日々だった――。愛を欲し、誰にも届かない声で泣く孤独な魂たちの出会いが生む、切なる愛の物語。メガホンを取るのは、『八日目の蝉』『銀河鉄道の父』の名匠・成島出(なるしま・いずる)。
今回、杉咲花の出演に続き、志尊淳の出演情報を解禁!
杉咲演じる貴瑚の声なきSOSを聴き、救い出そうとする岡田安吾(おかだ・あんご)役を、NHK 連続テレビ小説「らんまん」での好演が話題を呼び、高橋文哉とW主演を務めるTBS系ドラマ「フェルマーの料理」でも圧倒的な存在感を放つ志尊淳が演じることが発表された。
安吾は、精神的にも肉体的にもギリギリの状態だった貴瑚と出会い、彼女を救い出そうと動き出す塾講師のトランスジェンダー男性(※1)だ。貴瑚の幸せを心から願い行動する安吾は、自身も孤独な魂を抱えた役どころだ。本作のオファーを受けて原作を手に取ったという志尊は、「一読者として夢中で一気に読みました。僕がアン(安吾)さんを演じることで、トランスジェンダーの方々を傷つけることにならないかと最初は不安でしたが、監督の覚悟を聞いて成島組の船に乗りたいと思いました」とその決意を語る。また、安吾役については「本作に俳優としても出演していて、脚本の段階からトランスジェンダーをめぐる表現を監修いただいている若林佑真さんと、二人三脚でアンさんを作り上げていきました」とトランスジェンダー男性の俳優として活躍する若林と相談しながら真摯に役作りに向き合い、そのキャラクターを丁寧に作り上げたことについて語る。また、貴瑚役を演じた杉咲との共演については「アンさんを演じる中で、杉咲さん演じる貴瑚の全てを受け止めたいと臨み、クランクアップに際して、そうした関係を築けたことを実感しました」と、現場での熱い絆を語る。
志尊の心を動かした成島監督は、志尊の起用理由を「志尊さんが瑯壬生(ろうみお)役を演じた野田マップ『Q:A Night at the Kabuki』の初演と再演を二本とも拝見し、初演から再演にかけての素晴らしい成長にとても驚き、バックステージでどれだけ努力を積んでいる人なのかと注目してきました」とし、実際の現場での様子を「原作におけるアンさんは“アンパンマン”みたいな存在として表現されていますが、志尊さんの持つ温かな人柄や真摯な姿勢も、まさにアンさんだと、撮影を通じ確信しました」と高く評価している。
映画『52ヘルツのクジラたち』は東京を皮切りに、大分・北九州での撮影を経て無事にクランクアップ。
※1 トランスジェンダー男性:生まれた時に割り当てられた性別が女性で、性自認が男性の人。
【志尊淳:岡田安吾役】コメント
お話をいただいて初めて原作を手に取りましたが、一読者として夢中になって一気に読みました。この本を映画化する社会的な意義を強く感じた一方、自分がアンさん(安吾9を演じることで、トランスジェンダーの方々を傷つけるようなことにならないかと最初は不安でしたが、監督の覚悟を聞いて成島組の船に乗りたいと思いました。
現場では、本作に俳優としても出演していて、脚本の段階からトランスジェンダーをめぐる表現を監修いただいている若林佑真さんと、二人三脚でアンさんを作り上げていきました。全シーン、全セリフ、すべてに一緒に向き合ってくれ、背中を押してくれたことで、安心して役に臨むことができましたし、僕も悔いがないようにこれ以上ないというところまで考え抜いて演じ切ることができたと思っています。
アンさんを演じる中で、杉咲さん演じる貴瑚の全てを受け止めたいと臨み、クランクアップに際して、そうした関係を築けたことを実感しました。僕の撮影最終日、貴瑚を大分に置いて帰れるか心配でしたが、たくましくなった貴瑚の姿を見て、全スタッフさんに「花ちゃんをよろしくお願いします」と伝えアップすることができました。
【成島出監督】コメント
志尊さんが瑯壬生(ろうみお)役を演じた野田マップ「Q:A Night at the Kabuki」の初演と再演を二本とも拝見し、初演から再演にかけての素晴らしい成長にとても驚き、バックステージでどれだけ努力を積んでいる人なのかと注目してきました。
実際お会いしてみると、選ぶ言葉がとても的確でクレバーで信用できる俳優だと感じ、ぜひ彼にこそ、アンさんを演じてほしいと今回お願いするに至りました。
原作におけるアンさんは「アンパンマン」みたいな存在として表現されていますが、志尊さんの持つ温かな人柄も、まさにアンさんだと、撮影を通じ確信しました。