【詳細】映画『クラユカバ』黒沢ともよ インタビュー

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2024-04-11 18:00:00
塚原重義監督の初めての長編アニメーション映画『クラユカバ』が、2024年4月12日(金)より全国劇場にて公開される。

長年にわたり個人映像作家として活動してきた監督は、2012年に制作した『端ノ向フ』を第66回カンヌ国際映画祭の SHORT FILM CORNER 部門に出品するなど、精力的に活動を展開してきた。

そして2023年、構想から10年を経て完成した『クラユカバ』はファンタジア国際映画祭に出品され、長編アニメーション部門の「観客賞・金賞」を受賞し、国際的な映画祭で高い評価を集め、堂々たる日本での凱旋劇場公開が決定した。主人公・荘太郎役は今「最もチケットの取れない講談師」と言われる六代目神田伯山が務める。

今回本作で、謎多き地下世界“クラガリ”における象徴的存在・タンネを演じた【黒沢ともよ】を直撃!小説の文章のような台詞や古い時代の言葉に触れてみた感想や、タンネを演じるうえで工夫したこと、逃さずチェックしてほしいおすすめのシーンのほか、「○○を××するな」と言われた出来事や、普段ワクワクする瞬間など、ファン必見の貴重なお話が盛りだくさん♪
Q.塚原重義監督による初のオリジナル長編アニメで、2度のクラウドファンディングで資金を調達し、作品が完成したそうですが、出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

黒沢ともよ(以下、黒沢):私は「序章」と呼ばれる冒頭15分を制作する段階からの参加で、その時はまだ全編を制作できるかわからない、という段階でした。冒頭15分を作って皆さんに観ていただいて、これより先のお話を作るのに力添えをいただける方々が見つかればという感じで、気合が入った作品だな、とすごく楽しみに参加させていただきました。その後クラウドファンディングをして、いろんな方が新たに参加してくださって、全編の公開が決まりましたと報告をいただいて、遂に完成したんだな、と感慨深かったです。

Q.「序章」の冒頭15分と完成した全編とで、イメージが違った部分はありますか?

黒沢:冒頭の映像を観た時は、人さらいや“クラガリ”に対して怖そうだなとか、シリアスな感じを想像していて、ドラマチックでダイナミックな展開になっていくのかと思っていました。ですが全編の台本をいただいて、フィルムを見させていただいた時に、登場人物たちが戦争のある世界で当たり前のように生きていて、多分死んでしまう人もいるのですが、そこにフォーカスするわけではなく、戦争下での日常を描いたアニメなのだと思いました。誰かが成敗されるというよりは、少しだけこの世界の闇が見えた、というシックな展開になったのが意外でした。
Q.今回演じたタンネは、“クラガリ”という世界における象徴的存在で、小説の文章のような台詞や説明的な台詞が多いですが、演じていて難しかった点について教えてください。

黒沢:アフレコの時点でフィルムが出来上がっていたので、セリフと照らし合わせていった時に、このセリフを言いながらこういう顔をするんだ、と思いました。王道ではない表情とセリフのマッチングが面白くて。長台詞というか説明的な台詞の中で、どんどんタンネの表情が変わっていくのに合わせるのには苦労しました。でも難しかったからこそ面白いポイントでもあって、楽しかったです。

Q.「ジンタの音色に緞帳たらして」など、古い時代の難しい言葉もたくさん登場します。そうした言葉に触れてみていかがでしたか?

黒沢:メインキャストに、講談師の神田伯山さんと活動弁士の坂本頼光さんという話術のプロフェッショナルであるお二方が参加されていることもあって、開幕直後から講談調でストーリーテリングされていきます。私も大学生の頃、寄席に通っていた時期があってすごく好きだったので、私にとっては最近の若者言葉よりも馴染みがありました。わからない言葉もあまりなくすごく楽しくて、これをアニメの台詞で言えるのは楽しいなと思いながらアフレコさせていただきました。やはり伯山先生がおっしゃるとたまらないな、という気持ちになって。日本語って美しいな、と痛感しながらのアフレコでした。
Q.探偵の荘太郎役の神田伯山さんとの掛け合いのシーンが多いですが、共演されていかがでしたか?

黒沢:伯山先生には今回の収録ではお会いしていなくて。私が収録する段階ではほぼ伯山先生の声が入っていて、そこに合わせていく形でした。やはり伯山先生が物語の高低差というか、ガイドラインをしっかり作ってくださったので、そこに穴埋め問題みたいな感じで言葉を落としていけば成立する、という状態に演じてくださっていました。すごいなと思いながらアフレコをしました。

Q.タンネを演じるうえで、工夫したのはどのような部分ですか?

黒沢:「序章」で初めてタンネを演じさせていただいたのですが、「序章」の時には謎が多いキャラクターでした。エッセンスとして、サキよりは年上であるが大人ではない、一般人ではなく軍人っぽい、部下がいて列車長という立ち位置、男の子なのか女の子なのかわからないけれど少女性をなくしたくない、と監督から言われて。どのくらい女の子らしさを残すのか、女の子要素を少しずつ足したり引いたりしながら、丁寧に収録させていただきました。それを踏まえて本編では、より軍人というか、列車長としての責務が多く描かれていたこともあって、さらに軍人っぽい感じを足して演じてみたらどうかと思い、役作りをしました。
Q.監督から「こういうふうにやってください」といったディレクションはありましたか?

黒沢:乾いた感じ、熱量ではない感じを大事にしたいと言われました。

Q.ピストルで戦うシーンも多いですが、タンネのような戦うキャラクターを演じてみていかがでしたか?

黒沢:楽しいですね。やはり業界全体の話として役の幅が広がっていて、映像でもアニメでも舞台でも、守られる役ばかりではなく、女性が活躍する役をたくさんできるご時世になっています。すごく楽しいなと思います。

Q.自転車や路面電車、自動車が走るなど絶えず何かが動いていて、次々とシーンが変わっていき、約60分間の作品ですが見ごたえがありました。完成した作品を観て、お気に入りのシーンについて教えてください。

黒沢:中盤、荘太郎がタンネと合流して一緒に逃げて、逃げ切れるかと思ったら、向こうから戦車がブーンと来るシーンがあるのですが、そこで荘太郎がメキメキメキ、と木に潰されて、一回転んで木の下敷きになるシーンがあって。そこの荘太郎の声が「あっ、あっ!」みたいな、急にチャーミングな感じになって、キュンとしました。荘太郎のああいうところが魅力的なんですよね。あのシーンが好きで、声に出して笑ってしまいました。
Q.背景などにもこだわりが感じられ、何度も見返して細かい部分までチェックしたくなりました。逃さずチェックしてほしい、おすすめのシーンについて教えてください。

黒沢:後半“クラガリ”の秘密に迫って行った時に、見世物小屋に行くのですが、中の構造がグルッと見えるシーンが圧巻です。クラベリと呼ばれている、“クラガリ”の手前にある闇市のシーンは、本当に細かいお店がズラーッと並んでいるのが3DCGっぽい感じで再現されていて、このフィールドでゲームをプレイしたい、みたいな気持ちになります。

Q.音楽や文字などもレトロな雰囲気に仕上がっていて、白黒の活動写真のような演出も合間に挟まれています。黒沢さんご自身は、こうしたレトロな世界観はお好きですか?

黒沢:最近映像が綺麗な作品がたくさんあるから、ついそういう作品ばかり観てしまうのですが、白黒の映画を勉強のために意識的に観るようにしています。白黒の映画はフィルムを無駄にできない分、圧倒的にリハーサルをしていますよね。準備や段取りを丁寧にやって撮影していて、細かい調整もたくさんしているのだろうな、すごいな、と思います。
Q.“クラガリ”の秘密を探ろうとするシーンなど、ワクワクするシーンもたくさんあります。黒沢さんご自身は、何をしている時にワクワクしますか?

黒沢:読書が好きなので、本屋さんに行くと“ジャケ買い”ならぬ“表紙買い”をよくしてしまいます。お気に入りの装丁家さんやイラストレーターさんがいるのですが、この人が装丁をやっているなら買ってみようかな、と思って買ってしまいます。

今2拠点で生活していて、山の中の一軒家で過ごすこともあるのですが、夜ずっと流れ星が見えるんですよ。都会っ子からすると、星が見えるのってこんなにワクワクするんだ!絵みたい!本当にキラキラしているんだ!というのは発見でした。

Q.もし“クラガリ”のような謎めいた場所があったら探検してみたいですか?未知の場所には物怖じせず向かって行けるほうですか?

黒沢:行けます(笑)。最近身を守るものとか、高性能なものがたくさんあるじゃないですか。快適にサバイバルできるものがたくさんあるから、いろんなものをリュックに詰めて行きたいですね。
Q.荘太郎は「“クラガリ”に曳かれるな」という父親の言葉を、作中で何度も思い出します。黒沢さんは子役として子どもの頃から活動されていますが、子どもの頃にご家族や周りの方に言われた「○○を××するな」といった言葉で、印象に残っている言葉はありますか?

黒沢:小さい頃から演劇をやっていて、結構大きな劇場で子役をやらせていただいていたのですが、ずっと親から「奈落で遊ぶな」と言われていました。ですが、奈落が大好きで。奈落には常駐の大道具さんがたくさんいて、本当にクラガリみたいでした。そこに親の目を盗んで遊びに行って、劇場の大道具さんたちと遊んでいたんですよね。奈落はすごく暗くて、知らないうちに大きなものが回ったり、上がったり下がったりするから危ないのですが、行ってしまっていました。
Q.作品を観た人には、どのようなメッセージを受け取ってほしいですか?読者に向けて、見どころを教えてください。

黒沢:テンポよく物語が進んで行く作品なので、飽きずに観てもらえると思います。今リバイバルで昔の作品が流行っていますが、その中でもあまりフォーカスされていなかったテイストが、サイバーパンクな感じで舞台になっているので、没入感を楽しんでほしいなと思います。日本語が巧みな方がたくさん声をあてている作品で、日本語って本来とてもキャッチ―で美しいから、古き良き日本語のよさもぜひ楽しんでいただきたいな、知っていただきたいなと思います。この作品が面白いなと思ったら、ぜひ若い方にも寄席に行ってほしいです。年配の方々がたくさんいて、優しくしてもらえますので(笑)。

ありがとうございました。


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[プロフィール]
黒沢ともよ
1996年4月10日生まれ、埼玉県出身。
2000年、NHK大河ドラマ『葵 徳川三代』の市姫でテレビドラマ初出演。2005年、『モーツァルト!』のアマデ役でミュージカル初出演。2010年、劇場アニメ『宇宙ショーへようこそ』の主人公・小山夏紀役にて声優デビュー。2015年4月より放送の『響け!ユーフォニアム』の黄前久美子役でテレビアニメ初主演。2018年、第十二回声優アワード主演女優賞受賞。主な出演作にTVアニメ「アイカツ!」シリーズ(2012~)、「アイドルマスター シンデレラガールズ」シリーズ(2015~)、「スキップとローファー」(2022)、「アークナイツ」(2022)、「葬送のフリーレン」(2024)、『劇場版モノノ怪 唐傘』(2024)など。

あらすじ

「はい、大辻探偵社」

紫煙に霞むは淡き夢、街場に煙くは妖しき噂...。今、世間を惑わす”集団失踪”の怪奇に、探偵・荘太郎が対峙する!目撃者なし、意図も不明。その足取りに必ず現る"不気味な轍"の正体とは...。手がかりを求め、探偵は街の地下領域"クラガリ"へと潜り込む。そこに驀進する黒鐵(くろがね)の装甲列車と、その指揮官タンネとの邂逅が、探偵の運命を大きく揺れ動かすのであった...!!

本予告


映画概要


【クラユカバ】
2024年4月12日(金)公開
キャスト
神田伯山
黒沢ともよ 芹澤優
坂本頼光 佐藤せつじ 狩野翔 西山野園美
原作・脚本・監督:塚原重義
音響制作:東北新社
音楽:アカツキチョータ
プロダクションプロデュース:EOTA
アニメーション制作:チーム OneOne
配給:東京テアトル ツインエンジン
製作:クラガリ映畫協會

公式サイト:映画『クラユカバ』
公式X:@kurayukabaINFO

©塚原重義/クラガリ映畫協會

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