【詳細】映画『そして僕は途方に暮れる』藤ヶ谷太輔 インタビュー

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2023-01-12 10:00:00
2018年にシアターコクーンで上演され、各所から絶賛を浴びたオリジナルの舞台を、脚本・監督・三浦大輔×主演・藤ヶ谷太輔が再タッグを組み映画化が実現した『そして僕は途方に暮れる』が、2023年1月13日(金)より全国公開。

本作は、藤ヶ谷太輔演じる主人公の平凡なフリーター・菅原裕一(すがわら・ゆういち)がほんの些細なことから、恋人、親友、先輩や後輩、家族…と、あらゆる人間関係を断ち切っていく、人生を賭けた逃避劇。脚本・監督を務めるのは、『愛の渦』『娼年』など、毎回賛否が渦巻く衝撃作を世に送り出し、各界から注目を集め続けている異才・三浦大輔。

舞台に続き主人公・菅原裕一を演じるのは、Kis-My-Ft2 のメンバーとして活躍する藤ヶ谷太輔。ばつが悪くなるとすぐに逃げ出してしまうクズ男っぷりを見事に体現。藤ヶ谷の映画主演は6年ぶり。「あんな限界を迎えたことはない」と言わしめるほど、現場ではまさしく心身を削り撮影に挑んだ意欲作。これまでのイメージを大胆に覆し、俳優として今までとはまた違う新たな魅力を放つ。

藤ヶ谷演じる「逃げ続ける」主人公・裕一と5年間同棲している彼女・里美役に前田敦子、親友・伸二役に中尾明慶が、舞台と同じ役柄で続投。映画から新たなキャストとして、裕一の父・浩二役、母・智子役に、日本映画界をけん引する俳優 豊川悦司、原田美枝子が名を連ね、姉・香役に香里奈、バイト先の先輩・田村役に毎熊克哉、大学の後輩・加藤役に野村周平ら個性的で魅力あふれるキャスト陣が集結。

今回、本作で主人公・菅原裕一を演じた【藤ヶ谷太輔】を直撃!舞台と映画で違いを感じた部分や、豪華キャストとの撮影秘話のほか、クズを演じるうえで意識した点や、演じるのは負担だけど舞台をやりたい理由、三浦監督の舞台に初めて挑んだ髙木雄也(Hey! Say! JUMP)にかけた言葉など、秘エピソードをたっぷりとお届け♪
Q.2018年に舞台を上演してから2021年に映画の撮影現場に入るまでに3年が経っていますが、舞台と映画でどのような違いを感じましたか?

藤ヶ谷太輔(以下、藤ヶ谷):裕一が外に逃げるシーンがあって、舞台だと劇場の中で移動するだけなのですが、映画だと自転車を漕いだり走ったりして、ものすごい距離を逃げたので、どんどん立体になっていく感じがありました。舞台の稽古の時もとことんやったのですが、時間も経ちましたし「舞台をやっているから監督に簡単にOKをもらえた」というところが一つもなくて。三浦大輔監督のOKラインがその時の状況によって変わるので、小さな針の穴に糸を入れていくような作業をずっとやっていました。
Q.完成した作品を観て、舞台との違いをどのように感じましたか?

藤ヶ谷:滑稽なところはより滑稽に見えましたし、逃げていくところの立体感やリアリティがすごく感じられました。撮影中楽しい思い出は一つもなくて、初号試写で作品を観た時も「このシーン1日以上やったな。それこそ50回以上やったな」とか、そんなことばかり考えてしまいました。現場にいなかったスタッフの方も初号試写を観ていたので、裕一のキャラクターの滑稽さに笑い声が起きて「これって笑えるんだ」と思いました。舞台の時も初日にお客様から笑い声が出て、稽古の時は誰も笑わないし物音一つないので、初日に「これって笑えるんだ」と気づいたのですが(笑)、それと同じような感覚が初号試写の時もありました。結局裕一は真面目に生きていて、必死にやっているから滑稽に見える感じです。
Q.前田敦子さん、中尾明慶さんは舞台からの続投ですが、今回映画で共演して「お2人の新たな一面を知ることができた」と感じた部分はありますか?

藤ヶ谷:あの過酷で独特な三浦組を一緒にクリアしてきた2人というのもあって、もちろん安心感はありましたが、撮影期間はコロナ禍だったので、会話をしたということもなく、本番で初めて対話する感じでした。

Q.原田美枝子さん、豊川悦司さん、香里奈さんなど、映画版から新たに加わったキャストの方と共演されて、どのような印象を持ちましたか?

藤ヶ谷:香里奈さんは僕がCDデビューする前、ドラマ「美咲ナンバーワン!!」でご一緒して、僕が生徒で香里奈さんが先生役でした。その後ドラマ「PRICELESS〜あるわけねぇだろ、んなもん!」でもご一緒して、テレビ局でもけっこう会う機会があって、僕としてはずっとお姉さん的存在の方です。そんな香里奈さんが本当にお姉さんの役になったという面白さと、香里奈さんだからこそぶつかっていけたところもありました。両親役の原田さんと豊川さんには、お芝居の面ですごく助けていただきました。僕だけでなく、三浦組に出演した方、大ベテランの方でも苦戦していて、やはり監督が「もう一回」といったら「もう一回」だし、「もう一回」と言われて少しずつ演技を変えてみるとか。そこの幅と言いますか、お芝居の細かさが「さすがだな」と思いました。それによって自分も感化されて、新たに出る感情もありました。
Q.家族の空気感を出すために意識したことはありますか?

藤ヶ谷:コロナ禍で撮影したので、空き時間に家族で話すみたいなことはなかったです。仲が良すぎず離れている感じが、家族の気まずい空気感というか、そういうものにも生きてきたんじゃないかな。僕だけではなく、撮影中楽しい思い出がある人はいないと思います(笑)。この先何が待っているのかという恐怖があって、みんなだいたい下を向いて、スタミナの温存をして、シーンとしていました。それがリアルな感じで映っていればいいな、と。本当はもっといろいろ話したかったです(笑)。

Q.現場でのやり取りの中で、共演者の方からかけられた言葉で印象に残っていることはありますか?

藤ヶ谷:裕一が彼女、親友、後輩、姉、母と、いろいろな人に会っては逃げていくのですが、豊川さん、原田さん、中尾君から「藤ヶ谷君はこれを全員分やっているんでしょ?すごいね(笑)」「一人分やるので無理。限界だ」と言われました(笑)。お母さんだったらお母さんのシーン、お父さんだったらお父さんのシーン、僕は逃げた先に次の人がいるので、逃げて終わりではなく、その先にさらに地獄が待っている(笑)。三浦組独特のつらい現場を知っているからこそ、それがエネルギーになって「次の人につないでいかなきゃ」と思いました。
Q.「もう一回」となることもあり、苦しい状況だったと思います。OKをもらってホッとした瞬間はありましたか?

藤ヶ谷:どんどん追い込まれていたので、OKが出て「やった!」というよりは、OKが出たらまた次のカットになるので、喜びみたいなものは全くなかったです。スタミナを計算して小分けに出しても「もう一回」だし、全部出しても「もう一回」だし。嬉しいとか、何もなくなってしまいました(笑)。三浦さんは舞台の演出を主にやられている方なので、それだけ限界の限界まで引き出してくださった感じです。三浦さんによると、現場で3パターン考えていたそうです。もしかしたら「もう一回」というのは、AパターンではOKだけど、Bパターンの時は違うとか。3本分映画を撮っていたような感じなのですかね?わからないですけど(笑)。

Q.舞台では背中が印象的でしたが、映画では表情が細かくて素晴らしかったです。クズを演じるということについて、どう表現しようと思っていましたか?

藤ヶ谷:僕の中で芝居、舞台をやりたくて、ジャニーズの人が今までやったことのない演出家で、自分の好きな方が何名かいたのですが、三浦さんとタッグを組めるとなって「嬉しい!」と思いました。それから三浦さんの作品に出たことがある人に連絡をしたり記事を調べたりしたら、すごく恐ろしい人だという評判がありました。そこから舞台の稽古が始まりましたが、怖い感じは全くなくて、怒鳴ったりもしないし、けなしたりもなくて、聞いていた話と全然違うなと思ったのですが「もう一回」「もう一回」と言われて、全然つかめなくて。ずっとやってもクズっぽさとか、一生懸命やるのが滑稽だというのがなかなかつかめなくて。ある日「この作品は三浦さん自身を表現しているから、台本の表面だけ見るのではなく、日々三浦さんを観察しよう」と思って、三浦さんを観察したらハマってきました。三浦さんに休憩中話を聞くと「僕も締め切りになると携帯の電源を切る」とか。実体験も含まれていてバックボーンがあって、点が線になっているんだな、と。舞台をやっていてよかったというよりは、また新たに作っている感じ、大きくしている感じです。こだわりの詰まった2時間になっているんじゃないかと思います。
Q.監督に追い込まれたからこそ、普段のオーラを消して役になっていけたのでしょうか?

藤ヶ谷:26歳の時に、田村孝裕さん演出の「コルトガバメンツ〜ハジメのハジマリ」をパルコ劇場でやらせていただいたのが初めてのストレートプレイでした。振り返る仕草だけでも、田村さんに「ジャニーズっぽいのじゃなくて」と言われたのがショックでした。僕はただ振り向いただけなのに、ジャニーズフィルターがかかって、振り向くだけで決まってしまう、絵になってしまう。26歳の時に、自分の中に課題ができました。今まで必死にかっこよくなるもの、決まるものをかき集めてきたのですが、26歳から「芝居の時はそれを外していかなきゃいけないんだ」と気づきました。その後三浦さんに出会って、完全にジャニーズっぽさみたいなものを外してもらえました。でも、三浦さんの現場が終わって次の日にライブがあると、ジャニーズっぽくいなきゃいけなくて「この仕事ってすごく大変だな」と思いました。いろんな方と出会って変わっていく自分も面白いし、アイドルと舞台と、両方できたらいいと思います。

Q.演じるのは負担だけど、舞台をやりたい理由について教えて下さい。

藤ヶ谷:三浦さんに出会って、自分を変えていただけたり、新しい扉を開いていただけたりして、相手とお芝居をすると自分はこうなるんだ、という面白さを改めて教えてくださって。舞台ははかないものだから、観ていた方の頭の中にしか残らないですが、こうして映像として、三浦組の作品を残せたというのはすごく財産ですよね。嬉しいです。「A-Studio+」に松坂桃李さんや岡田将生さんなど、三浦組をクリアしてきた、経験してきた方がゲストでいらっしゃると、お互い多くを語らなくても「あの三浦組をよくぞ」という何か通ずるものがあるので、やれてよかったと思います。今後三浦さんと組む人は誰かな、ジャニーズだと誰がやるのかなとか、すごく気になりますね。髙木雄也が三浦組の舞台をやるとなった時に、珍しく髙木に「三浦さんってどういう人ですか?」と聞かれました。すぐ答えられる人が先輩にいたら楽じゃないですか。ジャニーズだったら多分僕が初めて三浦組を経験しているので「とにかく苦しいと思うよ」と言いました(笑)。
Q.何回も逃げていく裕一について、どのような印象を持ちましたか?

藤ヶ谷:彼は真面目に生きているので、ふとした瞬間に「嫌だな」「面倒くさい」「怖い」と拒否反応を起こすと逃げてしまいます。僕は演じていて「かっこいい奴なんじゃないかな」と思いました。僕も撮影中逃げたかったですが、いろいろ考えるじゃないですか。これだけ多くの人に迷惑をかけて、自分の場合だと芸能界で仕事ができなくなるし、そうなったら自分には何ができるのか、というのをいろいろ考えるんです。彼はそういうことを考えるというよりは、瞬発的にワーッとなったら逃げてしまう。相手によって逃げ方も違うんですよね。この人の時はこう変えようじゃなくて、その時に出た素直な気持ちで結果的に逃げてしまう。人間が誰しも持っている願望「行きたくないな」「逃げたいな」を実際にやっている人だからかっこいい。舞台の時もそうだったのですが、前半は滑稽に見えるから「こいつクズだな」と相当笑われましたが、後半は「自分ももしかしてこういうところあるかも」と、みなさんに突き刺さっている様子が舞台をやっていて感じられました。さんざん鼻で笑っていたくせに、もしかしたらそれが自分かも、と思った瞬間に笑えなくなる。人間が持っている願望を裕一が実際に体現しているから、その先どうなるか観たくなるし応援したくなる。僕は初号試写で楽しい思い出がなかったし、つらいのがバーッと出てきましたが、自分の役を見て「大丈夫か、頑張れ頑張れ」と思いました。

Q.撮影していて印象に残っているシーンについて教えてください。

藤ヶ谷:裕一が後ろを振り返るシーンがあるのですが、最後の方の振り返るシーンの時に、テストも入れると100回くらいやったんですよ。それをすごく覚えていて。三浦さんが「答えを出さないでほしい」と。「成長したとか、楽しそうとか、かっこいいとか、一つ大人になったとか、答えを出さないで、日本語の辞書にない言葉で表現してほしい」と言われて。100回以上やりました。撮影しているところを一般の方が見て「あ、キスマイだ!藤ヶ谷君だ!すげー!」みたいにザワザワしたのですが、なにせ100回以上やっているじゃないですか。一般の方々も最初は感動しているけど、ずっと同じことをやっているので、だんだん飽きてきて「あ、終電だ」と帰っていく(笑)。朝方まで撮影をしていたので、朝方になったら誰もいなかったですね(笑)。

ありがとうございました。

[プロフィール]
藤ヶ谷太輔
1987年6月25日生まれ、神奈川県出身。
2011年にKis-My-Ft2のメンバーとして「Everybody Go」でCDデビュー。アーティストとして精力的に活動するほか、「A-Studio+」(TBS)、「キスマイ超BUSAIKU!?」、「10万円でできるかな」(EX)等多くのバラエティ番組やCMなど幅広く活躍。役者としてもドラマ・映画・舞台など多数出演している。近年の主な出演作に、ドラマ「ミラー・ツインズ」(東海テレビ・WOWOW/19)、「やめるときも、すこやかなるときも」(NTV/20)、「華麗なる一族」(WOWOW/21)、ドラマ・映画「信長協奏曲」(14/CX、16)、「MARS~ただ、君を愛してる~」(16/NTV、16)などがある。『ハマる男に蹴りたい女』が1月14日よりテレビ朝日系にて放送スタート。

ストーリー

自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年同棲している恋人・里美(前田敦子)と、些細なことで言い合いになり、話し合うことから逃げ、家を飛び出してしまう。その夜から、親友・伸二(中尾明慶)、バイト先の先輩・田村(毎熊克哉)や大学の後輩・加藤(野村周平)、姉・香(香里奈)のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出し、ついには、母・智子(原田美枝子)が1人で暮らす苫小牧の実家へ戻る。だが、母ともなぜか気まずくなり、雪降る街へ。

行き場を無くし、途方に暮れる裕一は最果ての地で、思いがけず、かつて家族から逃げていった父・浩二(豊川悦司)と10年ぶりに再会する。「俺の家に来るか?」、父の誘いを受けた裕一は、ついにスマホの電源を切ってすべての人間関係を断つのだが――。

本予告


映画概要


【そして僕は途方に暮れる】
2023年1月13日(金) TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開
藤ヶ谷太輔
前田敦子 中尾明慶 毎熊克哉 野村周平 / 香里奈
原田美枝子 / 豊川悦司
脚本・監督:三浦大輔
原作:シアターコクーン「そして僕は途方に暮れる」(作・演出 三浦大輔)
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト:映画『そして僕は途方に暮れる』
公式Twitter:@soshiboku_movie
公式Instagram: @soshiboku_movie
公式TikTok: @soshiboku_movie

ハッシュタグ
#そし僕
#そして僕は途方に暮れる

©2022 映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会

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