映画『おしょりん』高橋愛 インタビュー
特集インタビュー
2023年11月02日 18時00分
人生を懸けてメガネ作りに挑んだ人々の情熱と愛の物語。映画『おしょりん』が福井県先行公開中、11月3日(金・祝)より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開。
今では日本産メガネの95%を生産している福井県。藤岡陽子「おしょりん」(ポプラ社)を元にした本作は、明治時代の福井を舞台に、豪雪地帯のため冬は農作業ができず収入の道がなくなる村を助けようと、メガネ工場をゼロから立ち上げた増永五左衛門と幸八の兄弟と、二人を信じて支え、見守り続けた妻・むめを描いた、挑戦と情熱、そして家族の愛の物語。史実をもとに、福井がメガネの聖地となった成り立ちを追いかけ、“ものづくり”の魅力と、実用品かつ装飾品でもあるメガネに渾身の技術と魂を吹き込む職人と彼らを支える家族を感動的に描きあげた。
主人公・むめには、北乃きい。女性の自由が少なかった時代に、メガネづくりを成功させるという夢を見ることで、心の自由を手にした女性を生き生きと演じた。むめの夫である増永兄弟の兄・五左衛門には、小泉孝太郎。弟の幸八には、森崎ウィン。監督は『えちてつ物語 ~わたし、故郷に帰ってきました。~』の児玉宜久。共演にも、かたせ梨乃、佐野史郎、東てる美、榎木孝明、駿河太郎と実力派がそろい、史実に基づいた物語にリアリティを与えた。また、福井出身の津田寛治と高橋愛が、物語に深みを与える役どころで出演している。
今回本作で、五左衛門の幼馴染で宮大工の増永末吉(駿河太郎)の妻・増永小春を演じた【高橋愛】を直撃!明るく心優しい人柄で、メガネ作りに励む夫たちをむめと共に応援。生まれつき視力の弱い娘・ツネに眼鏡をかけるよう促す、重要な役どころだ。撮影中の思い出や福井弁で演じた感想、お気に入りのシーンのほか、子どもの頃の雪の思い出や眼鏡選びのポイント、10代のうちにやっておいた方がいいこと、日々支えになっているものなど、ファン必見の貴重なお話が盛りだくさん♪
Q.映画出演はお久しぶりですが、出演が決まった時のお気持ちを教えてください。
高橋愛(以下、高橋):福井県民として嬉しかったです。福井県で映画を作ってくれて、オール福井ロケで撮ってくださってありがとうございます、という気持ちでした。
今回眼鏡の工場も見学させていただいて、こういうストーリーがあって福井県の眼鏡が有名になったんだ、という歴史を自分自身知ることができました。国産眼鏡の95%が福井県で作られていて、眼鏡が有名だということはもちろん知っていたのですが、なぜ有名になったかというところに着目していなかったのが申し訳ないくらい。たくさん葛藤があったからこそ出来上がったのだということを、眼鏡を使っている皆さんに知ってほしいと思いました。眼鏡を通して福井県の景色や人の良さ、人間味を知ってほしい。「いい人」だけでは終わらない情熱とか。福井県の恐竜博物館は、化石がたくさん発掘される場所なのですが、実際は日本のいろいろな場所に恐竜の化石が埋まっているそうなんです。ですが、化石が発掘されるまで粘り強く掘り続けたのが福井県なのだそうです。福井県民ならではの人間の粘り強さも、『おしょりん』のストーリーの中に詰まっていると思いました。
Q.福井県の方言で演じてみていかがでしたか?
高橋:私は割と方言を使うことが多いので、撮影中アクセントなどをあまり直されなかったです(笑)。「高橋さんはネイティブだから大丈夫」と言われました(笑)。
Q.共演者の方の、福井弁での演技を見た感想を教えてください。
高橋:嬉しかったですね。こんなに福井弁を使ってくれて。難しくて、真似しようにも真似できない発音が多いと思うんですよ。あまり抑揚がない言葉で、独特なんですよね。博多弁や関西弁みたいに馴染みがないじゃないですか。そんな福井弁を皆さんが頑張って話そうとしてくれる姿がすごく愛おしくて、ありがとうございます、と思いながら見ていました。
Q.生まれつき視力の弱いツネの母親役でしたが、役作りでどのような点を意識しましたか?
高橋:台詞を覚えるのが苦手なので、そこは苦労しました。自分の娘が初めて眼鏡をかけて「見える!」というきっかけを作る母親役で、駿河太郎さん演じる父親がうなずきながら、娘が眼鏡をかけるのを促す、というカギとなるシーンでした。役作りというよりも、共演者の方々が作ってくださった空気感に、背中を押されました。「どう?かけてごらん?」みたいな、みんながツネに注目するような空気を作ってくださっていた感じがします。
Q.撮影現場は和やかな雰囲気でしたか?撮影には自然に溶け込めましたか?
高橋:シリアスなシーンが多かったのですが、カメラが回るまでは穏やかで。私は途中から撮影に参加したので、緊張したのですが、子どもたちの笑顔が緊張をほぐしてくれました。休憩中は、とにかく子どもたちとずっと遊んでいました(笑)。楽しく学校の話をしていて。「今何を勉強しているの?」「休み時間に何をしているの?」とか。差し入れのお団子を食べながら仲良くなれました。
Q.高橋さんが話しかけてくれることで、子役の方たちも演技をしやすかったのではないでしょうか?
高橋:もともと、(北乃)きいちゃんが子どもたちとの関係性を作ってくれていたんです。子どもたちとたくさん話していたみたいで。私はそこに加わっただけなので。きいちゃんが作ってくれた空気感がもともとよかった、というのがすべてですね。
Q.完成した作品を観た感想を教えてください。
高橋:「福井っていいところだな」と改めて思いました。こんなに素敵に撮ってくれて、もちろん県外の人に知ってもらいたい、世界に発信したいというのはあるのですが、まずは福井の人に観てもらいたいと思います。「こんな素晴らしいところに住んでいるんだ」と客観的に観られるな、と。
私が行ってみたいと思ったのが、きいちゃんと森崎ウィンさんが2人でじゃれている、冒頭の川のシーン。すごく綺麗だな、と思って。行ってみたいです。
Q.特にお気に入りなのは、どのシーンですか?
高橋:酒井大地さん演じる八郎がいなくなってしまい、みんなで嵐の中探しに行くのですが、きいちゃん演じるむめが涙をこらえながら、みんなに訴えるシーンで昔の日本女性の強さを感じ胸が熱くなりました。それと、かたせ梨乃さん演じるお姑さんが「増永家にお嫁に来たけど、こういう状況になったから、あなたは家から出て行く選択肢を選んでもいいのよ」と言うシーンもグッときましたね。私は女性なので女性2人の気持ちに共感して。むめが涙をこらえる姿に、「きいちゃんすごい、強い女性だな」と思いました。「日本で今忘れられてしまっている、普遍的な生きざまや、ものの考え方を伝えたい」という監督の思いも詰まっていて。現代は情報がたくさんありすぎて、周りの意見に流されるということも多くなっているじゃないですか。流されない、ぶれない心というのも大事だと思いました。
Q.雪のシーンも多いですが、高橋さんご自身の雪の思い出について教えてください。
高橋:綺麗に撮影してくださっていますが、福井の雪はわりとべちゃ雪なんですよ。私が小さい頃はそんなに雪が多くなくて。べちゃべちゃな雪の中で、たまに硬い雪があるのですが、それを踏みながら学校に行っていましたね。水分が多い雪だから、洋服や手袋が濡れてしまって、学校のストーブで乾かしていました。雪国なので、体育の時間に勝山市の方に行って、みんなでスキーを滑るという授業もありました。雪が積もったから、スキーの板を出してみんなでグラウンドに出よう、ということもあって。東京に出てきてから、スキー教室って特別だったんだというのを知って。雪国でいい経験をさせてもらったな、と思います。
Q.「諦めずに地道に続けることの大切さ」が描かれていますが、高橋さんご自身が諦めずに続けて良かったことについて教えてください。
高橋:全部かも知れないですね。小さい時から始めたクラシックバレエのほかに、合唱や声楽もやっていて。もとは宝塚歌劇団を目指していたのですが、「モーニング娘。」の活動でも、その経験は生かされているんですよね。道が違ったとしても、やってきたことは絶対にどこかで役に立っています。その積み重ねだという感じはしますね。周りの人は「努力」と言うけれど、好きなことを続けている分には「努力」と思わないんですよ。周りの人には「努力してすごいよね」と言われるけど、「え?好きでやっているんですけど」みたいな。例えば、モーニング娘。で活動していた時、私は振り付けを覚えるのが他のメンバーよりも遅かったんです。だから、家に帰って覚えるまでやる。人は「努力」というかも知れないけど、私は覚えられないからやっていただけ。
Q.モデルとして活躍されていますが、高橋さんご自身の眼鏡選びのポイントについて教えて下さい。
高橋:眼鏡は、なんとなくで買っちゃダメ(笑)。「これ好き」と思っても、かけてみないとわからないじゃないですか。
Q.特に重視しているのはどのような点ですか?
高橋:かけ心地と、自分に似合うかどうかと、気分に合うかどうか。似合うかどうかを人に聞くのもありだと思うのですが、まずは自分でしっくり来るか。自分の好きな系統のファッションに合うかどうかは、けっこう大事かな、と思います。
Q.「おしょりんになれば回り道しないで好きなところにまっすぐ行ける」という言葉が印象的です。高橋さんご自身が目指しているものや、今後叶えたい夢について教えてください。
高橋:宇宙に行きたい(笑)。それが今の夢ですね。海外には普通に行けるし、住もうと思えば住めるじゃないですか。だけど宇宙には違う星がたくさんあるわけだから、そういうものに触れてみたい。
Q.10代に戻れたらやりたいこと、10代のうちにやっておいた方がいいことは何だと思いますか?
高橋:私は戻りたくはないけど、10代のうちはやりたいことは何でもをやってみた方がいいと思います。先日母校の中学校で講演会をしたのですが、皆「失敗しないように、挫折しないためには」という質問が多いんですよね。「挫折すればいいじゃん。失敗しないと学ばなくない?」と思うんですよ。私としては「失敗じゃなくて気づきだと思えばよくない?別の道に行けばいいだけだから」。やったから気づける、やらなかったら気づけないので、とりあえず、やりたいことはやった方がいいよと中学生の後輩たちに伝えました。
Q.八郎が「つらい時は菩薩をみると辛抱できる」というシーンも登場します。高橋さんご自身は「これがあるから頑張れる」と支えになっているものはありますか?
高橋:支えになっているのは家族や友達、周りにいる人たちですね。悩みを聞いてもらったりとか、マッサージに行ったりとか(笑)。癒される時間も大事だと思います。
Q.1人で抱え込まずに、相談するのが大事なのですね。
高橋:1人だと思いがちですけど、1人じゃないんですよ、実は。旦那(あべこうじさん)がいいヒントをくれるんです。「1人って言っているけどさ、身の回りにあるものはみんな人が作っているからね」と言われて、確かに、と。1人じゃないんですよ。産んでもらっているから1人なわけじゃないし。最近、母親を亡くした方に会ったのですが「亡くなっていても私の中には生きているから」という言葉に共感して。いろいろ気付きをくれるのも、周りの人だな、と思います。
ありがとうございました。
[プロフィール]
高橋愛
1986年9月14日生まれ、福井県出身。
アイドルグループ「モーニング娘。」に第5期メンバーとして10年在籍し、6代目リーダーおよびHello! Projectリーダーとして活動。「モーニング娘。」卒業後は女優としてミュージカルや舞台、ドラマに出演する一方、ファッション誌を中心にモデルとしても活躍している。11年より、「ふくいブランド大使」、23年より「坂井エキサイト大使」を務めている。
時は明治37年、福井県足羽郡(あすわぐん)麻生津村(あそうづむら)(現・福井市麻生津)の庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)と結婚したむめ(北乃きい)は、育児と家事で忙しい日々を送っていた。ある日、五左衛門の弟の幸八(森崎ウィン)が勤め先の大阪から帰郷し、村をあげてメガネ作りに取り組まないかと持ち掛ける。今はほとんど知られていないメガネだが、活字文化の普及で必ずや必需品になるというのだ。成功すれば、冬は収穫のない農家の人々の暮らしを助けることができる。初めは反対していたが、視力の弱い子供がメガネをかけて大喜びする姿を見て、挑戦を決めた五左衛門は、村の人々を集めて工場を開く。だが、苦労の末に仕上げたメガネが「売り物にならない」と卸問屋に突き返され、資金難から銀行の融資を受けるも厳しく返済を迫られ、兄弟は幾度となく挫折する。そんな二人を信じ、支え続けたのが、決して夢を諦めない強い心を持つむめだった。彼女に励まされた兄弟と職人たちは、“最後の賭け”に打って出る──。
本予告
Q.映画出演はお久しぶりですが、出演が決まった時の…
Q.生まれつき視力の弱いツネの母親役でしたが、役作…
Q.完成した作品を観た感想を教えてください。高橋:…
Q.雪のシーンも多いですが、高橋さんご自身の雪の思…
Q.モデルとして活躍されていますが、高橋さんご自身…
Q.「おしょりんになれば回り道しないで好きなところ…
時は明治37年、福井県足羽郡(あすわぐん)麻生津村(あ…
映画概要
【おしょりん】
福井先行公開中
11月3日(金・祝)、角川シネマ有楽町ほか全国公開
北乃きい 森崎ウィン
駿河太郎 高橋愛 秋田汐梨 磯野貴理子 津田寛治 榎木孝明 東てる美 佐野史郎
かたせ梨乃 小泉孝太郎
監督:児玉宜久
原作:藤岡陽子「おしょりん」(ポプラ社)
脚本:関えり香 児玉宜久
エンディング曲:MORISAKI WIN「Dear」(日本コロムビア)
制作プロダクション:広栄 トロッコフィルム
配給:KADOKAWA
製作:「おしょりん」制作委員会
公式サイト:映画『おしょりん』
公式X:@oshorin_movie
©「おしょりん」制作委員会
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