映画「少女椿」TORICO & 中村里砂Wインタビュー

特集インタビュー
2016年05月23日 18時07分

エロとグロ、双方を併せ持ちながらも、その引き込まれる独特な世界観とストーリー展開で1984年に原作が発刊されて以来、アニメ映画化や舞台などで高い評価を受けてきた丸尾末広原作マンガ「少女椿」が本作で初主演となる中村里砂、そして監督にファッションブランド「ミーウィーディンキー」のトータルディレクター&デザイナーでもあるTORICOがメガホンをとってついに実写映画となって、2016年5月21日(土)公開される。

「MIKIO SAKABE(ミキオサカベ)」や「縷縷夢兎(るるむう)」「ANREALAGE(アンリアレイジ)」などに衣装協力を依頼し、作品の昭和90年代という架空の日本を忠実に表現するために、古いものと現代のものをミックスしたスタイルングを考え、古着や着物、デザイナーズブランドを組み合わせたものを使用するなど、随所に細かなこだわりが詰め込まれている。

そして今回、ファッション雑誌でも活躍中のモデルにして、ファッションブランド“E hyphen world gallery BonBon”のディレクターを務める中村 里砂と、ファッションブランド“MEEWEE DINKEE”のデザイナー&ディレクターも努め、初監督短編映画が7カ国11ヵ所の映画祭に招待上映、国内映画祭で準グランプリを受賞したTORICOが監督を務め「少女椿」の世界観をファッション性も高い作品に作り上げた。

Q. 本作では、どのような経緯で監督を務めることになり、中村さんに主役のオファーをしたのでしょうか?

TORICO:「元々、私自身が“少女椿”のコアなファンで、原作を読んだ瞬間に「私、この作品の監督がしたい!」って思っていました。その頃の私は、ほとんど自主映画を撮っていたかいなかったかという頃で、その当時、原作権を持っていた出版社へ直接出向いて、「映画化したいんです!」って言ったところからはじまりました。そこで、熱意が伝わり、映画化できる事が決まったんです。

映画化が決まり、いざ脚本を書きながら原作の“少女椿”のビジュアルに凄く似ている女の子の顔をずっと探していました。キャスティングする時は基本的に複数人の人の中から選びますが、色んな女の子を見ている中で、やっぱり中村さんの顔が一番みどりちゃんに似ていたというのが全てのきっかけでしたね。」

Q.それを聞いてどう思われましたか? また原作はお読みになりましたか?

中村里砂(以下:中村):「凄く嬉しいですね。初めてこのお話しをいただいた時に、長編映画の作品も、演技もはじめてだったので、とにかく自分にこの役が務まるのか、お話しをいただいた時は本当に自信がなくて不安しかありませんでした。

原作は、実写化のお話しをいただく前に読んだことがあって、結構ショッキングな内容なので、もちろん最初読んだ頃は、実写化することも、まさか自分がやるなんてことも想像していませんでしたね。なので、お話しをいただいて、私がみどりちゃんを演じ、それが映像化されるということが全く想像できなかったです。」

Q.みどりちゃんを実際に演じてみて、いかがでしたか?

中村:「みどりちゃんは、自分が言っていることと、思っていることが真逆になってしまう子なので、その言葉自体が本音じゃない部分が多く、そこの演技がとても難しかったです。けど、女の子として共感できる部分は多々あったので、そういう意味では“みどりちゃん”という女の子を理解することが出来ました。」

Q.監督から見て、中村さんが演じる“みどりちゃん”の印象や頑張っていた点などありますか?

TORICO:「いつもの中村さんのスタイルは把握しているので、衣装を着て、髪型を変えて、メイクをすると、スイッチが切り替わるところは、やっぱり女優さんだなって思いました。何歳かは言えませんが設定上“みどりちゃん”は凄く幼い少女なので、中村さん演じる“みどりちゃん”をどこまで幼く見せる事ができるか、メイクやヘアメイクだったりと中村さん自身も色々と考えていたと思いますが、見た目では中村さん自身のお肌がもともときめ細かくて綺麗ですし、幼い顔立ちへと気持ちから全てを切り替えてくれたので、絵的にも、とても助けられました。」

Q..中村さんが“みどりちゃん”とご自身を見比べて、似ていると思ったところはありますか?

中村:「ビジュアルで似ているというより、特に私だけがっと言う訳ではないと思いますが、どんどん欲が出てきちゃうところとかは似てるかも。それでいて、作中に出てくる人たちより凄く人間らしくて、誰もが持っているとは思いますが、人間味というかある意味では素直を言うか(笑)。あと、かわいそうな自分が好きっていう、これは自分自身がって訳ではなく、かわいそうだと思える自分が好きというか」
Q.実写化する上で、ストーリーの展開やキャラクターのビジュアルでこだわったところなどありますか?

TORICO:「まずストーリー展開では、ターゲット層をどの層にするのかから考え、10代〜20代、30代を主なターゲットと考えた場合、現代のその層の方達はテレビを観るよりYoutubeを観ている人が多いと考えました。Youtubeは短編の映像が多く、日本映画が持つゆっくりと展開していくのではなく、短い展開をつなぎ合わせたような飽きさせないアニメーションを入れたりとか、現代の人に合った観やすい方法で創りました。キャラクターのビジュアルに関しては、セットとキャラクターが重なったときに、どのように見えるのかを考えそこに重点を置きました。例えば、色が被らないように、キャラクターそれぞれに色を決めて、みどりちゃんだったら黄色と赤だったり、色のテーマを決めて、キャラクターたちが並んだ時も誰も見劣りしない被らない色使いをするため、キャラクターを少し変更したり、時には大幅に変更したり等して、色々と試行錯誤しながら色であったり見え方だったりを工夫していきました。

物語では、最初の設定が“昭和90年”と、もしも昭和時代が終わらなかったらっという設定で、昭和初期テイストを残しつつ現代とリンクしているみたいな。それでも架空の設定で現在の日本でもないし、かと言って過去の日本でもないというファンタジーな設定だったので、それを創り上げるには、既存で人気のブランドと新進気鋭のブランドの洋服を借りたりしつつ、その中に古い着物や下駄などというノスタルジックな物も取り入れ、新しいファッションを映画の中で創りそれを役者に着こなしてもらったところはかなりこだわっています。さらに、古い日本の畳や襖などにグラフィックアーティストの方達に斬新な作品を描いてもらったりと、新旧を織り交ぜて「少女椿」という世界観を創ったのが、何よりのこだわりです。」

Q.原作と実写の“カナブン”のビジュアルについて教えて下さい。

TORICO:
「2次元を3次元にするということで、実際に原作通りに実写化し果たしてそれが作中で映えるのかという、そこが一番重要なところでした。まず何といっても、男の子か女の子かで役者を決めるにあたって衣装も違ってくると思い、プロデューサー含め全員の意見が一致し男の子で役者を決め、その場合、原作の衣装のまま作品を撮り進めていくと腕や足がでているので、どうしても男っぽさが際立ってしまう、そしてなにより原作者の丸尾さん自身もキャラクターに同じ衣装を着せたくないという考えの方なので、なるべく原作に忠実にしつつも、カナブンに関しては変更するという方向で動きました。カナブン役のSuGの武瑠さんがよく見える、幼く見える、美しく見えることを一番重要ポイントに据え、髪型に、髪色、髪色の写り方など全てを計算して、新しいカナブンになった、といことですね。それでもマインド(精神)とか、中身は全部そのままのカナブンです。私自身“カナブン”が凄く好きで、個性的なキャラクターが揃う中で、他の人と並んでも引けを取らない衣装とヘアメイクにして私が思い描く実写のカナブンを創り上げました。」

Q.実際にグラフィックアーティストによるペイントが施されたセットや、出演者の身に着ける服もかなりこだわっていたり、映画「少女椿」の世界観の中で実際に演じられてどうでしたか?

中村:「原作に忠実でありつつも、監督のセンスで、より華やかな世界観なのが映画として人を飽きさせずに、かつファッション性もあり、ビジュアルとしてもすごく楽しめると思いました。」Q.本作に出演している方で、葛藤していた人は?

TORICO:「全員、葛藤してたんじゃないかなとは思うんですけど、一番大変そうだったのは声の部分だけでいうと、風間さんと団長役の中谷さんの声が似ていたので、中谷さんに声を変えて演技してもらいました。そのため、中谷さんの出演シーンはすべて変えてもらった声のトーンで揃えなければならなかったので、そこは大変だったと思います。それとSuGの武瑠さんが見た目もそうですが、なるべく女の子に見えなければいけなかったので、声もキーを高めに女の子っぽい声でお願いしたので、お芝居と声とを連結させるのが大変だったと思います。」

Q.現場でほかの役の方で気になった方はいますか?

中村:
「みなさんですね。みんなキャラが濃くて。一見するとみどりちゃんが唯一人間っぽく見えますが、実が中身は・・・っていう。ポスタービジュアルにもありますが、“誰が一番狂っているのか?”っという部分を作品を観るみなさんにそれぞれ考えていただきたいくらいみなさんすごく気になる役を演じています。」

Q.撮影中の監督とのエピソードなど、教えて下さい。

中村:「監督は、どんなハードスケジュールでもとってもオシャレだったのが凄かったです。自身でブランドをお持ちなのはもちろんですが、凄い寒くて、でも凄い派手なご自分のブランドのモコモコしたコートを着ていて、現場が凄く華やかでしたね。男性のスタッフさんが多いので、やっぱりどうしても、華やかさに欠けるというか。でも監督自身がセットに負けていないというか、男性の強さにも負けていない雰囲気もまとってましたね。」

Q.手を抜いてくることは一度もなかったんでですか?

中村:「一度もなかったです。」

TORICO:「やっぱり、まだまだ私自身が新人なんで、現場の人たちにそのくらいでないと馴染めないというか、楽しくなってもらえればと思って(笑)。それで私がメイクもしてない、動きやすさだけ考えたファッションだったら、舐められてしまうと思うので!」

中村:「いつ寝てるんだろう? というくらい、睡眠時間を削ってでも気合が毎回入ってましたよ。そういうのって大事だと思います。私もそんなTORICOさんを見て、こっちも仕事で本気で演じてるんだってって感じさせてもらえました。」Q.2人の現場での面白エピソードなどありますか?

中村:「実は、映画で使用した衣装の中に監督の私物がいくつかあったり、実際にTORICOさんが住んでいるお部屋を撮影で使っていたりしたので、完成した作品を観た時は私がプライベートで知っているのとは全く違う雰囲気でイイ感じに仕上がっていたのが良かったですね。」

TORICO:「クリスマス会とかプライベートでも中村さんは来ていた場所だったので、知っている空間だったと思います。」

中村:「そうなんですよ。実は監督のお部屋はかなり変わった造りで、本当に映画のセットみたいなもの凄い素敵なお部屋なんですよ。そういった監督のこだわったお部屋だったり、お洋服だったりというのがより作品をいい感じにしてくれていると思います。」

TORICO:「私は、中村さんがお昼にケータリングを「今日は何かな?」って見ているところが凄いきゅんっとなりました。何かな?って一番に覗きにいっているところが凄く可愛かったんですよ。」
[ファッションについて]
Q.本作の衣装(ファッション)へのこだわりは?

TORICO:「今回、「ANREALAGE(アンリアレイジ)」さんや、「MIKIO SAKABE(ミキオサカベ)」さんなど今新進系のブランドンの方々にご協力いただき、出演者、エキストラにいたるまで、作中の衣装は全てコレクションピースなどをご提供いただいて、本当にありがたかったです。「少女椿」の世界観が衣装によってより完成度の高い華やかなものになったと思います。」

Q.ファッションが好きな女の子にここをみて欲しいっていうポイントは?

TORICO:「みなさんが好きなブランドなど色々とエキストラの方が着用している衣装に混ざっていたりするので、映画を観ながら「あ!」っと、あのブランドだって分かると思うので、衣装の細かな部分も見逃さずに観て欲しいですね。」

中村:「私も監督もファッションの仕事もしていることもあって、映画自体もファッション性のある映像作品という面も強いです。ストーリーに入り込むのと同時にそれぞれのキャラクターの個性が際立つ衣装の細かい部分にまで注意深く観てもらえるとよりファッションが好きな方は楽しめると思います。」

Q.今日のコーディネートのポイントは?

TORICO:「今日は自分自身のブランドの、少女椿とのコラボレーションのワンピースで、映画の世界観がこのワンピースで見てとれるんじゃないかという位、グラフィックにこだわった1枚になっています。映画の中でもグラフィックを描いているArutaSoupくんがこのワンピースのグラフィックを担当しているので、それも合わせてこのコーディネートにしました。」中村:「トップスとボトムスはPAMEO POSEで、靴がイヴ・サンローランです。靴が編み上げで今年トレンドなので、服がシンプルな分、デザイン性のある靴を履きました。」

Q.夏に向けておススメのコーディネートは?

中村:「いつもその時の気分で好きなスタイルを決めていますが、ガーリーをベースに、夏だったらカジュアルな気分が多くなると思うので、2つをミックスしたスタイルが良いと思います。カジュアルすぎない、そして甘過ぎないのがオススメです。」

Q.これから映画を観る、原作ファンと初めて映画で作品をしる人に向けて一言お願いします。

TORICO:「原作を知っている方は、原作の構図を忠実に再現している部分もいっぱいあって、そこは謎解きのように観ながら探して欲しいですね。それこそ、2次元から3次元にする時に、可能な限り2次元に近付けたというところなので。

初めて作品を映画で知る方は、私も初めて「少女椿」を見た時に、エロとグロにちょっと衝撃を受けるのですが、そこだけではないところと、今の世の中ではタブーを全部隠してしまう傾向にあると思うので、タブーを詰め込んだような映画であり、ほかでは観れないテレビでも観れない、映画館へ行っても観れない、っという今後なかなか出てくるかどうか分からない映画に仕上がっているので、ぜひ観て下さい。」

Q.これから映画を観る人へ、どんなところに注目してみて欲しいですか?

中村:「見所はたくさんありますが、原作のストーリーの魅力はもちろん、CGやアニメーション、音楽など映像でしか観ることの感じることのできない演出の魅力が随所に詰まっているので、そういう細かな部分まで入り込んで楽しんでもらえたらと思います。」
Q.実写化する上で、ストーリーの展開やキャラクター…
Q.本作に出演している方で、葛藤していた人は?TORIC…
Q.2人の現場での面白エピソードなどありますか?中村…
[ファッションについて]Q.本作の衣装(ファッション)…
中村:「トップスとボトムスはPAMEO POSEで、靴がイ…
[プロフィール]
TORICO
初監督短編映画がモントリールを始めとする7カ国11箇所の映画祭に招待上映、国内映画祭で準グランプリ受賞。初劇場映画は7カ国の海外映画祭に正式招待された。その後も写真集「不思議ノ国ノ」を企画プロデュースして出版する等活動の幅を広げる。また数々のクリエイターの作品に女優として多数参加。インターナショナルモード誌「NumeroTOKYO」のブログで人気ブロガーとなる。2013年アーティスト明和電機の立ち上げたブランド「MEEWEE DINKEE」のデザイナー&ディレクター就任。

中村里砂
1989年7月12日生まれ
2010年よりモデルとして活動。「LARME」レギュラーモデルで、現在雑誌やテレビなど幅広く活躍中。2015年に初のスタイルブック「中村里砂FIRST STYLE BOOK RISADOLL」を発売。

映画概要
【少女椿】
5月21日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:TORICO
出演:中村里砂、風間俊介、森野美咲、武瑠(SuG)、佐伯大地、深水元基、中谷彰宏

[HP] 映画「少女椿」 公式サイト

©2016『少女椿』フィルム・パートナーズ

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