映画『ひらいて』作間龍斗 インタビュー

特集インタビュー
2021年10月21日 18時00分

女性から圧倒的な支持を得る芥川賞作家・綿矢りさが、高校生の思いつめた恋心、暴走する想いを描き、人間の根源的な愛を問う文芸少女のバイブルとなった小説「ひらいて」が、弱冠26歳・新進気鋭の若手監督・首藤凜による脚本・監督にて映画化決定。主演に山田杏奈、共演に作間龍斗(HiHi Jets/ジャニーズ Jr.)、芋生悠を迎え、2021年10月22日(金)より劇場公開!

成績もよくて、明るくて目立つタイプの愛(山田杏奈)は、同じクラスの“たとえ”(作間龍斗)にずっと片思いをしている。 ひっそりとした佇まいで寡黙なタイプだけど、聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえの魅力は、 愛だけが知っていた。 そう思っていたある日、彼には「秘密の恋人」がいることを知る。 それが病気がちで目立たない美雪(芋生悠)だとわかった時、いいようのない悔しさと心が張り裂けそうな想いが彼女を動かした─。 「もう、爆発しそう─」 愛は美雪に近づいていく。誰も、想像しなかったカタチで・・・。

今回、本作で【たとえ】を演じた作間龍斗を直撃!本格的な映画出演は本作が初となる作間。たとえについて「頭がいいな」「人を受け入れない感じが自分と似ている」と語り、原作の「瞳の奥が暗い」という表現に合わせて、目に力を入れず「目を死なせて」演じたという。また、撮影中に始まった本物の花火大会や、HiHi Jetsのメンバーから離れて感じた孤独、自分の出演シーンがない日にもおこなった撮影現場の見学など、足利市でのロケの思い出をたっぷりと語ってくれた!
Q.本作が映画初出演とのことですが、出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

作間龍斗(以下、作間):めちゃめちゃ驚きました。自分が活動してきた中で、初めて「映画」という分野が飛び込んできたので、「映画」というところへの驚きと、「ザ・ジャニーズ」ではないという驚き、「作品、難しすぎるだろ」という驚きが同時に来ました。

一同:(笑)。

作間:仮の台本を最初にいただいたのですが、ズラッと目を通したときに全然理解できなくて。「とりあえず原作を読むか」という感じでした。出演が決まったことについては単純に嬉しくて「準備に時間をかけよう」と思いました。

Q.「理解できないモヤモヤこそが本作の魅力」と言われています。作中で山田杏奈さん演じる主人公・愛の行動がエスカレートして暴走しますが、愛はどんな女の子だと捉えましたか?

作間:ああいうことを心の中で感じている学生は、女性に限らず男性でもいると思います。「暴れたい」「周りをめちゃくちゃにしたい」という気持ちを抱く人は多分います。そんなに「ヤバい」みたいなことは思わなかったです。確かに愛がやっていることはヤバいのですが、意外と異常者ではない。作品だからこそ、現実であり得ることがより一層過剰に描かれているのかなと思いました。

Q.どの辺りを手掛かりとして、役への理解を深めていきましたか?

作間:理解をしきれたわけではないです。撮影中も正解を見つけられていない。単純に台詞や伝えたいものについての正解はあったものの「全体の正解ってなんだろう?」というのは永遠の謎。「正解がわからないのが正解なのでは?原作者の綿矢りさ先生に正解を聞かないとわからないな」というのが正直な感想です。自分で理解して、どういう風に作り込んで、という技量は僕には全然なくて、その場その場で自分の感じるままにやってみて、探り探りでした。

Q.現場に入る前にどういった準備をしましたか?

作間:首藤凜監督と、何回か撮影前に話をする機会はありました。「作間くんのイメージでやってもらって構わないよ」と言われて。「おっと、難しいのが来た。それってどういうことなんだろう?全然わからないよ」と思いながらやりました。「多分、作り込んだりするのは違うだろうな。自分を変えちゃいけないんだろうな」と思いました。あまり情報を取り込みすぎないようにしました。入れすぎるとパニックになってしまうので。「今の自分のままの状態でやったほうが、監督の期待に応えられるだろうな」と思いました。細かく「こういう設定にしよう」などは決めませんでした。Q.たとえと芋生悠さん演じる美雪が、お互いに支え合っている関係が素敵でした。たとえとご自身とで似ているな、と思ったところはありますか?

作間:たとえの「人を受け入れない感じ」というのは似ていると言えば似ています。芸能界は新しい出会いが多いですが、僕は苦手なんですよ(笑)。人間関係を広くしていくのが苦手なタイプなので、そういうところは似ているな、と思いました。

ただ「たとえになりきれなかったな」と思えるのが、夜の教室で愛に初めて胸の内を明かすというか、辛辣な言葉をズラズラ話すシーンです。「たとえ、言いすぎなのでは?」と思った点がありました。監督に「もう少しニュアンス柔らかめでもいいですか?」と言って、たとえをちょっと柔らかい印象にしたところはありました。

Q.愛に数学を教えるシーンや、受験のためバスに乗るシーン、文化祭や卒業式のシーンなども登場しますが、青春らしさを感じたシーンはありますか?

作間:文化祭の準備のシーンです。僕自身は、文化祭に出たことが一回もなくて。文化祭のない学校に行ったというのもありますが、仕事の関係で出られなかった、というのもあって。準備をしている自分が「最高に青春しているな」と感じました。

あとは撮影中、校舎のベランダに出ているときに、ちょうど遠くで花火大会が始まったんですよ。作中にも花火のシーンがあるのですが、4号玉や10号玉が打ち上げられるような花火大会が本当に始まって。音的にも撮影を中断しなければならなかったのですが、ベランダで、制服を着て本物の花火大会をみんなで見るというのが、僕の人生で叶わないことが叶ったような気持ちで。「やっと学生をしている」という感じがしました。Q.完成した作品を観て、どのような感想を持ちましたか?

作間:自分がスクリーンの中にいるのが違和感でした。試写を観ながら、撮影中の思い出がずっと頭の中でぐるぐる回転している感じでした。足利市に泊まり込みでの撮影だったので、撮影がない日も現場を見学しに行ったり、川を歩いたり、映画館に行って映画を観たりしていました。

一同:(笑)。

作間:みたいなことを1人で2週間ぐらいずっとしていたので「懐かしいな」と思いました。

Q.特にお気に入りのシーンはどこですか?

作間:試写を観て初めて思ったのですが、愛が屋上で授業をさぼって1人で座り込んでいるシーンの色味が、愛の感情を表しているのかな、と。ぼやっとしている感じ、空が紫がかっていて、モヤモヤする感じが「綺麗だな、『ひらいて』という作品らしい映像だな」と思いました。目を奪われるシーンで、感動しました。あと2、3回は観たいです。

一同:(笑)。

作間:視点を変えて観たいですね。たとえ目線で観たり、愛目線で観たり、美雪目線で観たり。いろんな解釈ができるので、試してほしいです。

Q.たとえの寂しげな表情が印象的でした。今回演じるうえで大切にしたことは、どういった部分でしょうか?

作間:監督から「ちょっと間を開けて」「間が欲しいです」と言われたんですよ。相手の言葉を受け取ってから考える間があって、言葉を考えて発する、という。作り込んでいくというよりは、無の状態で台詞を聞いて、それに対して感情を切り替えて出す、みたいなことをやっていました。声の出し方も、ボソボソとしゃべりたかったらボソボソしゃべるし、もう少し発して、と言われたら発するし。あとは目を死なせていましたね。

一同:(笑)。

作間:昔よく言われたんですよ、「目、死んでない?」って。友達からもだし、取材をしていても「目を生かして!」と言われて。最近はなんとかなっているのですが、その時のことを思い出していました。「瞳の奥が暗い」と原作でも書かれていたので「目を死なせてみよう」と思って、目に力を入れなかったです。Q.山田さん、芋生さんとは、相談してシーンを作りあげたのでしょうか?

作間:今回「ここはこういう風にいきます」みたいなものが何もなくて。事前に相談してではなく、本番中に相手の様子を見ながらやっていきました。本番では台本では見えないものが見えるので「臨機応変にやるのが役者なのか」と思いました。

Q.愛、たとえ、美雪の三角関係をどう思いましたか?

作間:なかなかいびつな形ですね。現実でこの関係というのは、そうそうないだろうな。

Q.愛はたとえと美雪の関係性を破壊しようとしているのでしょうか?それとも、本当に純粋に、たとえと美雪の両方を愛しているのでしょうか?

作間:原作では「美雪を愛する感情に対して気持ち悪さが芽生えた」などが、愛の心情として書かれています。映画ではそれは語られていませんが、果たしてどうなのか。そこがこの作品のモヤモヤするところです。

Q.たとえは結果的に自分勝手な人間。人に優しくしているけど、それは結果として自分に返ってくるから優しくしている、と感じました。作間さんご自身は、たとえはどういう人物だと思いましたか?

作間:「頭がいいな」と思いました。自分もプライベートでそうしているんですよ。けんかをしたら後々面倒だから、けんかをしないとか。問題を起こすと、あとあとの処理が面倒。面倒くさがりなので、自分のために拒んだり、ある程度見放したり。人がけんかをしていても仲裁に入らない、とか。そういうことは日常生活ではあるけれど「穏やかだ」と周りから見られる反面、そういった内面があります。たとえも自分の世界を守りたいから愛の侵入を拒むし、自分のことをよくわかってくれている美雪は大切にするし。「自分の暮らしやすい環境を作って生活をしているな」と思います。自分の生活圏を壊す要因は、親なのか、愛なのか。そこで初めて囲いを取り払う姿が描かれています。

Q.ご自身の撮影がないときも現場を見学に行ったそうですが、それは何か理由がありますか?

作間:現場の雰囲気をつかみたい、スタッフの方々とコミュニケーションをとりたい、と思いました。自分が出ていないシーンはどういうテンションなのか。愛や美雪が辿っている感情を知れば知るほど、返す言葉の重みを増やしたり減らしたりできると思いました。そんなに「勉強、勉強」という感じではなかったですが、なるべく撮影に寄り添う感じで、この作品にかかわることができればな、と思いました。相手のお芝居をたくさん見れば見るほど「ここはどう来るのか」が予測できるようになるので、見学したことで演技がやりやすくなりました。

Q.愛と美雪は両極端のタイプですが、あえてキャラクターとしてどちらかを選ぶとしたら、どうしますか?

作間:めっちゃ難しいですね。どちらかと言ったら美雪かな。愛は怖すぎる。

一同:(笑)。

作間:愛が高校を卒業して4年ぐらい経ったら、まともな人間になっているはずなんですよ。ただ、あの状態でどちらかと言ったら美雪かな。美雪に関しては、病気などいろいろ抱えているので、それを支えきれる自信はないですが。Q.美雪が「誰かのためになりたい」という思いで行動する姿が印象的でした。作間さんご自身は「誰かのためになりたい」「この人がいたから頑張れた」と思った経験はありますか?

作間:関わっているすべての皆様に恩返しをしたいです。「何のために日々過ごしているんだろう」と考えたときに、学生時代は「何かしらで成功するために勉強しているんだろうな」と思っていたのですが、高校を卒業してジャニーズ事務所しか選択肢がなくなったときに「ここで進んでいくしかないんだな」と思いました。この業界は、支えがないとやっていけないところなので「ありがとうございます」を伝えながら、できるだけ力を使わせていただいて、出世払いみたいな感じで、大きくなったらその分返して、また大きくなったらその分返して、ということで。今もそうですし、今後もそういった形でやっていきたいです。

Q.HiHi Jetsのメンバーの方々も俳優として活躍されていますが、メンバーから言われて嬉しかったことや、メンバーに助けられたことなどはありますか?

作間:一人で地方に行っての撮影だったので、孤独をすごく感じました。気持ちの整理がつかない時は、メンバーが電話をしてくれて、解消されました。どんな時もメンバーの力は偉大でした。

Q.本作を10代から20代の作間さんと同世代の女の子が観るとしたら、どういった部分が見どころだと思いますか?

作間:美雪パターン、愛パターン、たとえパターン、それぞれ感情の変化があるので、思春期ならではの感情の変化を、作品全体から感じていただけたらと思います。

Q.特に注目してほしいシーンはどこでしょうか?

作間:たとえの父親役の萩原聖人さんが、僕に水をかけるところです。

一同:(笑)。

作間:顔にしかかかっていないのですが、綺麗にかかっているので、ぜひ見ていただけたらと思います。

ありがとうございました。

[プロフィール]
作間龍斗
2002年9月30日生まれ。神奈川県出身。O型。ジャニーズJr.内のユニット、HiHi Jetsのメンバー。2018年2月22日、舞台「ジャニーズ銀座2018」に出演とともにHiHi Jetへの加入を発表。同年3月、HiHi Jetsにグループ名を変更した。本格的な映画出演は今作が初となる。趣味はウクレレ、釣り、写真。特技はダンス、アクロバット、マーチングライフル、ピアノ。本予告
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<あらすじ>
高校3年生の愛(山田杏奈)は、成績優秀、明るくて校内では人気者。
そんな彼女は、同じクラスの“たとえ”にずっと片思いをしている。
彼はクラスでも目立たず、教室でもひっそりと過ごす地味なタイプの男子。だが寡黙さの中にある聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえに、愛はずっと惹かれていた。
自分だけが彼の魅力を知っていると思っていた。
しかし、彼が学校で誰かからの手紙を大事そうに読んでいる姿を偶然見てしまった事で事態は一変する。
「たとえに、恋人がいるのではないかー」その疑惑がぬぐいきれず、愛はある夜、悪友たちと学校に忍び込み、その手紙を盗んでしまう。
手紙の差出人は、糖尿病の持病を抱える地味な少女・美雪。その時、愛は、初めてふたりが密かに付き合っていることを知るのだった。それが病気がちで目立たない美雪(芋生悠)だとわかった時、いいようのない悔しさと心が張り裂けそうな想いが彼女を動かしたー。「もう、爆発しそうー」
愛は美雪に近づいていく。誰も、想像しなかったカタチで・・・。
映画概要
【ひらいて】
10月22日(金) 全国ロードショー
出演:山田杏奈
作間龍斗(HiHi Jets/ジャニーズ Jr.) 芋生悠
山本浩司 河井青葉 木下あかり
板谷由夏 田中美佐子 萩原聖人
監督・脚本・編集:首藤凜
原作・綿矢りさ『ひらいて』(新潮社文庫刊)
音楽:岩代太郎
主題歌:大森靖子「ひらいて」(avex trax)
制作プロダクション:テレビマンユニオン
製作:「ひらいて」製作委員会
配給:ショウゲート
PG -12

[HP] 映画『ひらいて』
[Twitter] @hiraite_movie
[Instagram]hiraite_movie

©綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会

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